雲のいざない

明るい陽射しが青い海や白い波にまばゆく輝く季節が来ると、誰ともなくビーチや海岸線の景色を思い浮かべることでしょう。そんな景色にさり気なく寄り添うように彩りを添える雲。目立ちすぎることなく、かといって無視できる存在でもありません。雲があることで景色に変化が生まれるかのようです。

雲にはいくつもの形態があり、それぞれに呼び名があります。よく見るのが「すじ雲」。晴れた青空の高いところにすじ状にたなびいています。それと似たような感じですが、もう少し小さくまとまっているのが「うろこ雲」とか「いわし雲」と呼ばれる雲で、歌詞などのなかにもしばしば登場します。この雲がもう少し大きい塊になると「ひつじ雲」となります。いわし雲もひつじ雲も秋によく出ることで知られています。

それらよりも低いところでふわふわと浮いているように見えるのが「わた雲」で、これがはったつすると「かみなり雲」、別名「入道雲」あるいは「積乱雲」となります。夏の始まりや終わりによく出現しますね。
これらのほかにもいろいろな呼び名を持つ雲がいくつもあり、暮らしの中に息づいているといっても過言ではないでしょう。
風景画や風景写真を見るとき、そんな雲にも目を向けてみると、いつもとはまた違った印象を受けるかもしれません。あるいは子供の頃の思い出が蘇るかもしれません。雲には天気を変える力があるだけでなく、人の心に響く何かを秘めているかのようです。どんな雲にどのような思い出や意味を見出すことができるでしょうか。さっそく新しい風景を探してみませんか。

文:有澤 隆